私は幽霊アパートの管理人！

【プロローグ】

　ゆうやけ空にカラスがカァ、とないた。
　わたし――山岸彩奈(やまぎし あやな)は圭介(けいすけ)お兄ちゃんの手をにぎっておうちへの道をあるいていた。
　ケイスケお兄ちゃんはわたしの従兄で、６歳年上のとってもカッコイイじまんのお兄さん。
　わたしはお兄ちゃんの手をにぎってあるくのが大好き！
　うれしい気もちででぼんやり空をみあげながらあるいていると、空に向かってうかんでいく女の子がいた！
「ケイスケお兄ちゃん、あの女の子、空にういてる！」
　わたしは大きな声をだして、空にのぼる女の子をゆびさす。
　すると、ケイスケお兄ちゃんがおどろいたようにいった。
「アヤナ、あの子が見えるのか？」
「えっ、うん。見えるけど？」
「そうか。アヤナはオレやたつのおばあちゃんといっしょなんだな」
　たつのおばあちゃんは、わたしたちのおばあちゃん。
　いつもニコニコしていてとってもやさしい。
　それに、いつもおいしいアメをくれる。
「ケイスケお兄ちゃんや、おばあちゃんといっしょ？」
「ああ。あの女の子はな。幽霊っていうんだ」
「ええっ、幽霊！？　あのすっごくこわくてくらいところからでてくるやつ！？
「それは、悪い幽霊、悪霊だ。そうじゃない、よい幽霊がたくさんいるんだよ。ふつうの人には見えないんだけど、俺やおばあちゃんには見える。そして、アヤナにも幽霊が見えるんだな」
　ケイスケお兄ちゃんがわたしのかみの毛をくしゃりとなでると、わらっていった。
「アヤナも見える人なら、いつかオレといっしょにおばあちゃんのお手伝いをしてほしい」
「おばあちゃんの、お手伝い？」
「そうさ。とっても大切なことなんだ」
　そういってわたしの手をきゅっとにぎると、ケイスケお兄ちゃんがもういちどいった。
「そうだな、アヤナがもうちょっと大人になったら、手伝ってもらおう」
　わたしは大好きなケイスケお兄ちゃんやおばあちゃんと、いっしょになにかできるんだっておもうとうれしくて、なんどもうなずいていった。
「うん！　わたし大きくなったらケイスケお兄ちゃんとおばあちゃんを手伝う。だから、そのときはわたしのことをよんでねお兄ちゃん、やくそく！」
「ああ、やくそくだ」
　背の高いおにいちゃんがしゃがんで、わたしのこゆびと自分のこゆびをむすぶ。
　「ゆびきった！」
　ふたりでいって笑いあう。
　そうして、またかえりみちを二人であるいていった。
　ステキなやくそくができたわたしは、うれしい気もちでむねがいっぱいだった――。