◇05. 秘密への入り口【歌桜視点】

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「小学生のお子さんが見ても大丈夫なように派手なシーンは極力なくしているつもりですが。ああでも、ひとが死ぬ描写があるので、それ、苦手なお子さんでしたら、避けておいたほうがよいかもしれませんね」 「ええ。分かったわ。ありがとう」  帰宅してから肌のお手入れをしているときに何気なくそのチケットを裏返してびっくりした。――『明日、15時に、ホテル東京パラダイスに、原田の名前で予約しています。よかったら来てください』  ……一流ホテルの名前だ。勿論、わたしみたいな、顔バレされると大変な著名人は、専用の入り口から入れるのだけれど。驚いた。まさか……わたしたち、そういう関係? 夫がしているから……いいって話? 「ハニートラップの可能性もあるわよねえ」とわたしはチケットをぴらぴらする。「うぅーん。確かに明日は撮影がオフだけれど。部屋入っていきなりカメラで撮影される……可能性も、ゼロではない」  かといって。自分の実名で予約している人間がそんな騒ぎを起こす? 普通に考えて。原田くんにとってもリスキーな話ではないか。ここまで考えてわたしの気持ちは固まった。――よし行こう。
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