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 山田二郎はいい子である。母親もその周辺の人物もそう言うのだから間違いない。  二郎が小学6年生になってから母親は仕事の時間を増やした。それまでは日付が変わってから仕事を終え帰宅してから夕食の時間までは母親が家にいたが、昼間から仕事をするようになり二郎が母親といられる時間は減った。二郎頭いいからね、今のうちにお金稼いで二郎が行きたい高校好きなように行かせてあげたいんだ。母親はそう言っていた。二郎は母親に昼間どんな仕事をするのか一応訊いてみたが、母親は“同伴”としか答えてくれなかった。  もちろん二郎は寂しかった。だが自分のためにやってくれていることを知っているので何も言わなかった。“普通”に生きるだけで金がかかるのだと彼はその時に知った。
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