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【 プロローグ 】
その小汚い古びた扉を開けると、右側にそれはズラリと並んでいた。
入った時とは違う光景に、安藤 渉は戸惑った。
タラリと流れる額の汗を左手で拭うと、思わず口を衝いて出る。
「何で……、あり得ない」
完全に消えていた蛍光灯が、パチパチと点いたり消えたりする。
視界の先にある奥の小窓からは、冷たい夜風が安藤の体をじわじわと冷やしていた。
濡れている青色のタイル張りの床から、穴の開いた自分の履いているスリッパに少しずつ何かが沁み込む。
心を落ち着かせるため、思い切り息を吸い込むと、ツンとした嫌な臭いがまた安藤の鼻をついた。
何か背後に気配を感じ、先ほどまで入っていた個室を覗く。
すると――
扉の向こうで、僕が僕を見て驚いていた。
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