ルサンチマン

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「回ってみたいです。」 「みゆき〜、案内してやったら?」 「は〜い、女将さん。」 安藤とみゆきは大浜に向かった。 「綺麗ですね。」 安藤は深呼吸した。 「それに空気も美味しい。」 安藤は青い空を見つめた。 「ちょっと待ってて。」 みゆきはどこかに消えた。 すると、缶コーヒーを二本持って帰ってきた。 「はい、これ。」 みゆきは安藤に缶コーヒーを手渡した。 とても温かった。 「立花さん、てっちゃんでいい?」 「はい。」 「なんで旅人やっとるの?」 みゆきは地平線を見つめた。 「真っ新な新しい自分に生まれ変わりたくて。」 安藤は缶コーヒーを開け、飲んだ。 「真っ新な新しい自分か。 でも、過去は背をっていかなならんよ。 過去は決して変えられない。 たとえそれがどんな過去であっても。」 みゆきの言葉が安藤の胸に突き刺さった。胸が抉られた。 「私は自分探しの旅かな。 名古屋で働いてたジュエリーショップが潰れた。 それで水商売にも片足突っ込んだ。 でも、男に媚びるのは性に合わなかった。 それで流れ流れてこの島に辿り着いた。ここ、猫が多いやろ。 猫島とも呼ばれてるんよ。」 みゆきは缶コーヒーを飲んだ。
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