ルサンチマン

夕方、帰宅途中の大学生紗希20歳が電車内で立ちながら、スマホを取り出した。インスタのストーリーチェックし、次にジャパンニュースのアプリをクリックした。
慶陽大学日吉台キャンパスサークル棟火災のトップニュースの動画があった。紗希はすぐにクリックした。
「慶陽大学日吉台キャンパスのサークル棟で火災が起きました。
火はかなり激しい勢いで燃えています。
消防車がたくさん出動し、消火作業に当たっていますが、火の勢いは相当なものです。
サークル棟にも50人近くの学生がいたとして、消防隊員が救出作業を急いでおります。
多くの救急車、救急隊員も待機しております。
大勢のパトカーも来ています。
サークル棟以外の学生はキャンパス内から全員出たそうです。
大学で起きた前代未聞の大火災に現場は非常に混乱しております。
ただ今の現場の状況です。
一旦スタジオに返します。」
ジャパンニュースの男性報道記者41歳が中継で伝えた。
スタジオのキャスター月島京子30歳は険しい表情をした。
月島は濃いブラックのスーツに身を包んでいた。
「救出の状況は？」
「5名が救出されました。
一階や二階にいた学生だと聞いています。かなりの怪我を負っている模様です。45名は依然としてサークル棟にいる模様です。」
「大変厳しい状況が続いています。
続報が入り次第速報でお伝えします。」
月島は丁寧に話した。
紗希は食い入るようにスマホを見た。
死者45名、重軽傷者5名の悲惨な結果になった。
消防の調査によると放火という。裏口階段の上から下まで大量のガゾリン痕跡が発見されたという。
ガゾリンタンク三個もサークル棟の裏庭から発見された。
タンクから指紋は発見されなかった。
古い建物であるサークル棟には防犯カメラは設置されていなかった。
この慶陽大学日吉台キャンパスの大火災は連日、ニュース、ワイドショーを賑わした。
尚、保護された5名の重軽傷者の学生の中には目撃者はいないと見られている。
警察は重軽傷者の回復次第、事件当時の様子を聴く模様だ。
慶陽大学学長の三谷康裕59歳は会見でアカデミズムに対する悪しき挑戦。
若い命を奪った残虐極まりないテロ行為だと怒りを露わにした。
政財界のOBOGたちも怒りの声明と哀悼を次々と発表した。