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「――ま、新山!」
え?
肩をびくっと震わせて振り向くと、志村が私の席の真横に立っていた。
「お前、まだ友達いないのかよ」
もう二学期終わりだぞ? 志村はふっと息を抜いたように笑って、手に持った丸めた教科書をパンパンともう片方の手のひらに打ち付けながら話す。私は体を大きく横にずらし、垂れた髪を左耳にかける。
本当は作る気なんてないから友達いないんだけどな、と思う。でも志村のまっすぐにこちらを見つめる瞳からは、冗談めかしながらも本気で心配してくれてることが伝わるから、何も言わずに頷く。
「ねぇ冬休みどこ行くー?」
私の前の席で話し込んでいた派手なグループの女子たちが、さっきよりも声を高く細くしながらこちらを伺っているのが気配で伝わる。やだな、って思ってるのが伝わる。志村君、なんで新山さんと話すのって、その背中が言ってる。
志村は、見た目も性格も、すごくかっこいい男子だから。
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