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『うわぁ、祥子さん、やる~』
『黙って!あなたになんか私の名前を呼ばれたくない!2人とも、もう二度と私の前に姿を見せないで!』
『嫌だ、祥子さん怖~い。寛也、早く行こ!』
『ああ。祥子ちゃん、もっと自分に素直に生きた方が楽しいよ。じゃあね』
寛也さんは、後ろ姿のまま片手をあげ、キザに立ち去った。
不思議だ…
あんなに素敵に見えていた人なのに、今はもう嫌悪感しかなかった。
『祥子。書類とかいろいろ、また近いうちに連絡する。しばらくビジネスホテルに泊まるから。じゃあ…』
圭輔の目は死人のように冷たかった。
温かみのないそのセリフが、私の心にナイフのように突き刺さった。
結局、最後までお互い謝ることはしなかった。
本当に自業自得。
それ以外には何もない。
まるで自分がお姫様にでもなったみたいに勘違いして舞い上がって、それに気づくまであまりにもたくさんの時間を使い過ぎた。
もっと…
自分の愚かさに早く気づくべきだったんだ。
裏切りの果てに失くした人。
さよなら、圭輔。
さよなら…私の今までの人生。
私は今日からまた、平凡で真面目な、ただの1人の女として新しい人生を生きていく。
もう二度と、胸を焦がすような恋愛はしないと誓って。
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