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ステンドグラスから色とりどりの光が降り注ぎ、金や銀でできた装飾品が照らされて輝く。
神聖な、というよりもどこか成金を思わせる、きらびやかだかごちゃごちゃした礼拝堂に怒号が響いた。
「グレイ! また、礼拝をサボったな!」
白髪が目立ち始めた中年の男が、顔を真っ赤にして目の前の若者に怒っていた。
「別にいいでしょう? 祈ったからって何かが変わるとは限らないんですから」
そう憮然として答えるのは、癖のある金髪と垂れた碧眼の20歳前後の若者である。整った顔立ちで貴族といっても通じそうだが、頬のそばかすがきらびやかさよりどこか素朴さを感じさせている。
中年の男は顔をさらに赤くする。
「我々の祈りが無駄だというのか!?」
「それはわかりませんが、祈るよりも行動したり、本を読んで知識を付ける方が有意義でしょう?」
若者、グレイは平然と口答えした。
中年の男、グレイの上司のこめかみに青筋が立つ。
「何たる不遜な態度だ! お前には神に対する敬意が足りん!」
熱くなる上司に対し、グレイはさらに冷めていく。
(神、ねぇ……)
グレイは神に対して懐疑的だった。見たことないものを信じないほど頑固ではないつもりだが、この教会が謳っている「神」を信じる気には到底なれなかった。その思いは経典や歴史書を読めば読むほど深まっている。
まぁ、さすがにそんなことを言えば説教じゃすまないため、口にはしないが。
上司の説教を聞き流していると、扉の方から救いの手が差し伸べられた。
「グレイ、マヌーサ枢機卿が呼んでいるよ」
上司の説教が止んだ。この司教である上司よりも偉い者がグレイを呼んだのだ。序列を無駄に気にする上司は無視することが出来ない。
「それでは、枢機卿が呼んでいるので、失礼します!」
とびっきりの笑顔を浮かべてそそくさと逃げるグレイの背中を、上司は黙って睨みつけ続けた。
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