山田の友達の東雲君のままでよかったのにな。

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冷たい汗が額に滲む。 あの時の教室の冷たさを思い出す。 生唾を飲み込み息を整える。 「あいつ、綺麗なら何でも食いそうだからさ。男女関係なく。だから誘惑されねーようにな」 山田の言葉に心拍数が戻っていく。 汗が引いていき体温が戻る。 そう言う事か、と安心して息を吐く。 「馬鹿言ってんなよ」 「いくら東雲が綺麗な顔しててもそりゃないか」 ガハハと大きな口を開けながら山田が笑った。 僕もその隣で笑った。安堵して。 その後成島君と会うことはなかった。 山田もそこまで仲が良かった訳ではなかったらしく、個人的に会うこともせず、会話の中に成島君が出てくることもなかった。 だから僕は顔も存在も忘れかけていた。
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