最後に笑うのはあたしのはず

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最後に笑うのはあたしのはず

 双子の姉妹があった。姉の名は樹璃(じゅり)、天が与え給うた美しさと才能に溢れ光り輝く美しい娘である。妹の名は長美(おさみ)、失礼な言い方をすれば至って平凡などこにでもいる娘であった。 二人は常に一緒の仲の良い姉妹に見えていたが、長美は樹璃に対して激しい劣等感を抱いていた。幼少期より、心無い友人や親戚から「双子の可愛くない方」「双子の出来の良くない方」と小馬鹿にされ、心の中に消えぬ劣等感を抱くようになっていたのである。  樹璃は心の底から長美を愛しており、長美が周りの姉妹比較からくる劣等感に苛まれて涙を流す度に優しく慰めた。 だが、長美からすれば樹璃は劣等感を生み出す原因にして元凶そのもの。それに優しく慰められたところで「持てる者の驕り」に過ぎず「持たざる者の僻み」の理解が出来ない樹璃からすれば上から目線の言葉に過ぎない。長美の中に更なる劣等感を生み出し、樹璃に対する逆恨みの炎を燃やすだけであった。 そう、長美は樹璃を心の底から嫌っていた。ただ、表面上では「美しい姉が大好きな妹」を演じている。周りに好かれている樹璃を嫌うような態度を取れば余計に自分が悪い目で見られてしまうと感じ、これまでの人生の中で編み出した処世術である。 樹璃は長美が自分のことを嫌っているなど微塵も考えていない、それは両親や親しい友人すらも知ることのない長美の心の内である。  長美は全てにおいて樹璃に勝つことが出来なかった。生まれついての容姿、学校の成績、運動…… これらを磨くためにどれだけ努力を重ねても樹璃には及ばなかったのである。 大学時代は英語を専攻した樹璃と机を並べたくないと言う理由だけで、中国語を専攻している。  長美も恋をし、好意を抱く男性が出来た。勇気を出して告白するも「お前より、お姉ちゃんの方が好きなんだ」と断りを入れられてしまう。長美の告白を受け入れた男もいたのだが、家に呼んだ時に樹璃の姿を見た瞬間にその男は心奪われ、アッサリと長美を捨ててしまった。 樹璃であるが、男は引く手数多。誘蛾燈に引き寄せられる蛾のように樹璃の光り輝く美しさに誘われた男が寄ってくるのである。長美に告白してきた男と交際を始めたかと思えば「飽き性」なのかすぐに交際をやめて、次の男と交際を始めてしまう。先述の長美を捨てた男とも交際を始めるも、瞬く間に次の男に切り替えるぐらいであった。  全てにおいて勝てない上に、好きになった男まで奪われる。このままあたしはお姉ちゃんの影でひっそり寂しく生きていかなければならないのだろうか。こう考えるだけで長美は人生が嫌になり、出来ることならこのまま消えてなくなりたいと考えるようになったのであった……
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