シュガー・レイン

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ーーーー ーーーーーー 日が高くなった。夕方だというのに、アスファルトを照りつける太陽が熱くて、文化部の私は参ってしまう。 でも、そんなのものともせず、今日もサッカー部が元気に走り回っていて。 お目当ての彼を眺めていれば、私だって暑さを忘れられる。 数分後、ボールを片付け始めた彼らは、一度集合してからゾロゾロと列をなしてサッカーコートを後にした。 「…高瀬!」 「お疲れ様。早いね?」 「おう、終わってからダッシュしたからな!」 「ふふ、私に会いたくて?」 「なっ、…そういうこと言うなよ、恥ずかしい」 自転車を押してバス停まで駆けてきた一ノ瀬は肩にかけていたエナメルバッグをいつもの位置に置くと私の隣に座る。 少し赤くなっている彼の耳を見て、今日も私はキュッと胸を震わせた。 彼が極度の照れ屋だというのは、付き合ってから知ったこと。 告白されることはあっても、サッカー優先で全部断ってきたらしく、実は私が初めての彼女らしい。 お互い、初めてだらけのお付き合い。 好きだと伝え合った雨の日。あれからもうすぐ2ヶ月が経とうとしている。 付き合ってから一ノ瀬は、雨の日以外も私と一緒にバスを待ってくれるようになった。 未だ、キスはおろか、手を繋いだこともないけれど…これが私たちのスピードで。 一ノ瀬と並んでおしゃべりが出来るこの10数分が幸せで仕方ない。
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