6人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
「おはよー琴。なんかあった? 顔がにやついてるけど」
教室に入るなりエリちゃんが訊いてきた。「なんか」の理由を知っていると言わんばかりにエリちゃんの顔も笑っている。
「おはようエリちゃん。別に何もないよ?」
「ウソだぁ。佐久間と話せた時の琴、いっつもその顔するもん。私の目は誤魔化せないよ~」
「う……私そんなに顔に出やすいかな……」
頬を揉むように押さえる私を、エリちゃんは面白そうに見つめた。
森恵理奈ちゃんとは中学からの親友だ。去年別のクラスになった時も疎遠になることもなく、また同じクラスになれた今も関係は変わらない。
私とは頭ひとつ分も差がある長身で、長い黒髪に吊り気味の目。初対面の人には少し怖い印象を与える時もあるけれど、母子家庭だから家事も率先してやるし、まだ幼稚園児の弟の翔くんの面倒もよく見る、頼れるお姉さんタイプの自慢の友達。
最初のコメントを投稿しよう!