犬猿同盟

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帰りのホームルームが終わり、放課後になる。わたしは、下駄箱で靴を履き替え、照りつける日差しをじっと見つめた。 「暑い……」 「あの!」 男子の声。クラスメートだ。男子は、緊張している様子で、わたしに話しかける。 「犬伏。もしよかったら、途中まで一緒に帰らない? あ、飲み物とか奢るし」 「ごめんなさい。そういうのは、ちょっと」 静寂の中、どこかの部員がランニングする声が聞こえた。 「え。なんで? もしかして、彼氏がいるのか?」 「うん。います」 「そう、か。悪い。じゃあ、また」 「うん。また明日」 微笑んで、校門へ向かう。なんだか、最近、こういうのが増えた。傷付けているみたいで心苦しい。わたしは勉強で精一杯なのに。 しばらく歩き、駅に着く。電車に乗って、揺られていると、目的の駅に到着。そこからバス停に乗り換える。面倒だけれど、レベルの高い進学校に入学することを目指すと決めた日から、覚悟はしていた。 バス停のベンチに座る。暑くてかなわない。バス、早く来てほしい。
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