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マリエッタ嬢に連れられ辺境伯の執務室へ通されたのはそれから1時間後だった。
部屋には辺境伯と庭で茶を入れていた執事が待ち構えていた。
「ご足労いただきすまなかった勇者殿」
どうぞソファへ、とミナストリア辺境伯は小さくしかし華々しく微笑んだ。
整いすぎた顔立ちのせいで僅かな微笑みでも派手てしまうようだ。
「私もそちらへ。バリダお茶を」
辺境伯が言うやいなやでバリダと呼ばれた執事はあっという今にティーセットの準備を整えており、つい二度見直してしまう。
なんて早業だ。
辺境伯に差された側のソファに掛ける。すると机の反対に座るとばかり思っていた辺境伯があろうことが隣りに座ってきた。
「では私は向こうに…」
妙な距離が気まずくて腰を上げかけると、辺境伯がそれを押し止める。
「隣の方が気楽なのでお嫌でなければこのままで」
こちらは向かい合うほうが気楽だが、困ったようにはにかまれるとまたなんとなく気圧され席に留まってしまう。
なんともこう、この辺境伯が苦手だ。と再確認する。
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