「ウチの猫、時々しゃべるけど、気にしないでね」

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 カゴで丸まっていた時にはさほど気にしなかったが、リューイチは猫にしてはかなり大きい。小柄な聖良と並んで立つと、腰の少し下あたりまで体高がある。黒猫のビロードのような毛並みはつやつやして、大きな耳に金色の瞳、すらりと通った鼻筋の精悍な顔つきをしている。そんな顔で牙を剥きだし、「グルル」と唸れば、 「それ、クロヒョウですか?」  そう見えなくもない。 「まさか、猫ですよ」  聖良は慌てて手を振った。リューイチを足で奥に押しやりながら、 「クロヒョウなわけ、ないじゃないですか」 「そりゃそうですよね。あはははは!」  男は乾いた声で笑ってくれるが、聖良は冷や汗が出てきた。実は、このマンションはペット禁止なのだ。預かっただけとはいえ、管理人の耳にはいれば面倒なことになりかねない。聖良は一度ドアを閉め、今度は細く開けて、リューイチを男の目から隠しながら、 「荷物、ウチですか?」  最初からやり直すことにした。男は怪訝に眉をひそめながらも、 「いえ、実はお隣のなんです。でもお留守のようなので、何かご存知じゃないかと思いまして」  と普通に答えた。  だがその言葉に、聖良は頬を引きつらせる。お隣の女がどこに行っているのか、実はちゃんと存じ上げている。しかし聖良は、 「ああお隣の方、いないみたいですね」
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