37.これから

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37.これから

新婚旅行から帰り、親しい人にお土産を 渡したり、写真をみせたり、 餞別にお返しを選んだり しばらくバタバタしていた 結婚して生活は大きく変わった 私の事を隠せば隠すほど、 顔を撮りたい人が増え、 そういった事への対処が一番悩ましい 一度、ひどく追い回され 仕事にも影響をきたす出来事があってから ユジュンが心配して、私設のボディガード をつける事になった ユジュンが決めた事だし 心配かけるくらいならそうした方が いいと思ったが、そのせいで外に 出るのが億劫になってしまった でも、 夜中に車で郊外の24時間スーパー に行って買い物をしたり 夜の河原を散歩したり 深夜に人の少ない屋台でお酒を飲んだり、 平日の朝に映画を見たり 制限された生活のなかでも、楽しさを 見つけていけることもわかった 元々、依存する事が悪のように感じて 素直に頼る事ができなかった部分も あるが、彼とたくさん話合ううちに 状況に合わせて変化してもいいと 考えられるようになった 私たちの関係はいい意味で発展途上で これからもずっとそうなんだと思う 今朝も鏡の中の自分に声をかける ユジュンがいるから大丈夫! 心配ないよ! 玄関を開けると 何処かからパーンパーンと 聞こえた気がして思わず笑みがこぼれた おわり * 「はぁ」 私は今、都内の大型書店に用意された 仰々しいサイン会場に座っている 緊張でため息が止まらない 昨日はサインの練習をしすぎて手が痛いし 緊張で眠れず、肌のコンディションが悪い 私が書いたKPOPスターとの恋愛の本が 少し話題になりあれやこれやと 業界の人が押しかけて すごいすごいと囃し立てられ なぜか今日、この場にいる ナミは私の理想だ 多分びっくりするぐらい美人で スタイルも良くて 会社も儲かっている社長 架空の話だから盛りだくさんに してみたが、 たまに作者にもそれを想像する方が いらっしゃって… そういったファンレターを頂くと 心が痛くなる 私は文中でたまに出てくる 平凡な女そのまま こんな事が自分の身に起こったら いいのにな という妄想を書き溜めていたら いつの間にか小説になってしまった どちらかというと重症方面のファン だから皆さんをがっかりさせない為にも 人前には出ないと決めていたのだが これだけは断りきれなかった 「線にそって並んでください」 「必ずマスクの着用をお願いします」 係員の声が聞こえる 「先生、始めますね?」 編集の方が声をかけにきた お願いしますといって頭を下げる 一人目の方は多分40代中盤の女性で 興奮ぎみに感想を語ってくれた 本当にありがたい… 練習したサインを披露する 集中してお話を聞いていたら あっという間に時間が過ぎ最後の人になった 若い男性だ、珍しい 「先生の物語、僕の話かと思いました」 小さな声で離す 日本語だか日本人ではない 顔をあげる 「えっ」 息を呑む マスクとメガネ、大きめのニット帽 明らかに高級そうな時計と白い半袖ニット そして優しいカーブの切長の目 彼は韓国語で続けた 「でもTKGはダサ過ぎますよ!  小説を読んで、どうしてもお会いして  言いたかったんです」 名刺頂けませんか? タッカンマリ食べにいきましょう 僕はメールアドレス間違えたりしないですけどね ふふふ 朦朧とした意識の向こう側で そんな事を言っていた気がした 震える手で 何とか名刺を手渡し 「かむさはむにだ・・・」 震える声で返した 男性はそれを受け取ると すぐスタッフらしき 人に連れられて 足早にさっていった 時間にして2分くらいだろうか それはまさしく 私の推し、大好きな・・・ その後展開があったのか? 時間があれば書いてみたいと思います。 それでは 本当のおわり お付き合い頂きありがとうございました 〆
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