ふぅん、カリスマホストねぇ〜

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ふぅん、カリスマホストねぇ〜

 何が悲しくて、オレがホストクラブなんかに行かなきゃなんねーんだかな。  滅茶苦茶に足取りが重いオレ。 『ご馳走するから来いよ』  仕事先の仲間、松本からのメールに、タダ飯が食えると思って、とりあえず約束の場所に到着。 「おお!津々理(つづり)、こっちこっち!」  松本が手招きする。  んだよっ!と、ちょっと腹立ちながらチッと舌打ちして松本の方へ行く。  「行こう行こう!」と、身体中から音符マークが飛んでオレの手を引く。 「何でお前はそんなに浮かれてんの?」  かなりの違和感を抱いて訊いた。 「まぁ、いいから付いて来いって!」  そう言われて黙って付いて行くと、何やら繁華街の中を歩き続ける。既にリーマン風のオヤジが赤ら顔で出来上がって歩き、呼び込みの若い男や女が店の前で、営業スマイルを顔に乗せ手招きする。  歓楽街に入ったな、周りを見て分かる。 「何処で飯、食わせてくれるんだよ!」  さすがに違和感が凄すぎて、思わず怒鳴った。 「全部俺が出すから、ホストクラブに付き合ってくれよ。」  はぁ〜っ!?  何言ってんの、コイツ。  待てよ待て待て、ホストクラブで飯食うの?いやいや、無いわぁ〜。全く興味無ぇーし、ほら、あれ、映画の無料鑑賞券、貰っても観になんか行かねぇなぁーってヤツ。 「オレ、降りた」  速攻で振り向き帰ろうとすると、 「後生だから!頼むよ、津々理ぃ〜」 「お前、後生って言葉、何処で覚えた?今時使わねーよ」  オレを離さず、前屈スゲーなってな位に頭を下げる松本を見て、ちょっと痛々しい。仕方なく重い鉛を付けられた様な足取りで進む。今日は人助けだと思って割切るしか無ぇな。  そしたら、いつかきっといい事があるだろう、そう信じて。 「あ、松本くん、いらっしゃい!」  松本の贔屓らしい男が満面の笑みに、スカした声で出迎えた。 「レオくん、連れてきたよ、友達」  ほぉ、あなたはレオくんですか?  で、お前は何?友達連れて来いって?すっかりいいカモじゃん。 「こんばんは、お友達」    オレにウィンクしやがった。激しく頭痛がしてきた。
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