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渡辺、と声をかけられ右を向くとそこには今日の主役がいた。予期せぬ出来事に心臓が跳ねる。
「明日少しだけ時間作れない?」
周りに聞こえないぐらいのボリュームで私にそう聞いてきたのは、小学生の頃から高三の今までずっと同じクラスだった青柳陽生。
だったと過去形なのは、冬休み中に東京に引っ越すらしいから。
本当に仲が良い友達以外には秘密にしていたようで、クラスメイトの大半がさっきのホームルームで知ったのだった。
その流れで急遽開かれたお別れ会。
場所は、高校の近くにあるカラオケ店のパーティールーム。
会うのが今日で最後になるからと、受験生にも関わらず大勢の人が集まった。
青柳との関係を幼なじみと言っていいのか分からないけど、今日まで引っ越すことを知らなかったのは、私達も親同士もそこまで仲良くなかったからだと思う。
ただのクラスメイトなんだと痛感し、誰にも気付かれないように落ち込んでいたのに。
「……え、何で?」
だから、反応するまで時間がかかってしまった。
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