△月△日

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       平山悠亮。これが僕の名前。勉強もスポーツも中の中の高校生。親友一人、彼女なし。  平平凡凡な普通の男子だが、一つだけ普通じゃないとこがある。  見えざるものが見えるってとこだ。  だからと言って何かできるのかと言えば、何もできない。ただ見えるだけ。この能力を高めて霊能者になればいいなんて思うかもだけど、そのための修行なんて僕には絶対無理。  で、あれから姉ちゃんと姪っ子ちゃんたちはというと――姉ちゃんは三つ子を育てるためにいつまでも悲しんでいられないと、すぐ立ち直り――でも時々悲しい顔で遠くを見ている――子育てに奮闘している。  三つ子ちゃんは上から一葉(いちは)二葉(ふたば)三葉(みつば)と命名をされ、すくすく育っている。  誰にも見えない四女ちゃんを、僕は四葉(よつは)と名付け、叔父として三つ子ちゃんともども彼女の成長も見守っていた。  義兄さんはいわゆるマスオさんで、遠藤一家は姉ちゃんの実家――つまり僕たち平山家と一緒に住んでいる。  三つ子が増えたことで賑やかになったのは言うまでもなく、毎日がてんやわんや。でも親父も母ちゃんもメロメロで嬉しそうだ。  だけど、三葉はあのままずっと左手を広げなかった。  もちろん姉ちゃんを始め、義兄さんも親父に母ちゃんも理由がわからない。何らかの障害があるようには見えないし、ずっとお医者にもかかっているが、ドクターですら首を傾げている。  でも僕は知っている。三葉は四葉と手をつないでいるのだ。広げたら最後、自分の妹が消えてしまうと思っているかのように。
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