垂れ目な男を姉にする

姉妹に飢えた者たち

　喉から手が出るほど“姉妹”が欲しかった。

『えっ……別に普通だよ。姉とは仲良くないしさー』

　姉妹持ちの友人たちは、私が羨ましがる度に“そんないいもんじゃない”とあっさり否定。
『口うるさい』『乱暴』『性格悪い』と愚痴を言う割には、インスタに姉妹でお出かけ動画やお揃いコーデなどを頻繁に上げている。彼女たちの“仲良くない”という言葉は私の知る日本語とは多少意味が違うらしい。

『でも私は兄弟の方が良かったなー』と、姉妹から誕生日に貰ったブランドバッグとピアスを身に着けた状態で友人がほざいた時には、軽く憎悪が湧いた。
ほう、ならば交換しようじゃないか。挨拶代わりに関節技をかけてくる兄弟で良けりゃ、喜んで差し出すよ。ただし返却は認めない。

　心の中で悪態をつきつつ、友人の姉妹トークをしっかり拝聴する。どんなエピソードも聞き逃したくはない。特に“お姉ちゃん絡み”の話は大好物。
『アオイは何でうちの姉の話を聞きたがるの？』と怪しまれてしまうが、姉がいないからこそ、その存在に憧れ、よその姉妹でもいいから日常を知りたいと願う。猫を飼えない人が猫動画を追い求めるようなものだ。

　しかし、姉妹持ちの友人たちには一切理解されない。
少しでも妹気分を味わいたくて、部活の先輩の電話番号を【○○お姉ちゃん】と登録していると話すと、大抵の人は引き気味になる。それしきの事で引くな。こっちはお姉ちゃんASMR動画にまで手を出してるんだぞ。今のところ、男性向けしかないのがとても辛い。