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「密輸ですね」とゾエの言葉を遮ってノードが引き取った。
小説では「能面のような無表情」と表現されていたゾエの口元に、わずかに笑みが浮かんだように見えたのは気のせいだろうか。ゾエとノードの絡みなんて小説にあったっけ?
「魔力保持結界はさほど難しい魔術ではありませんので、檻ひとつ分くらいの魔術付与なら低級魔術師でも可能です。頑丈な檻と魔術師がいればそれでいい。魔獣生息域付近なら魔術師など探さなくとも腐るほどいます」
「魔塔主様、魔塔の林に張り巡らされているのも魔力保持結界だと思うのですが、あれは難しくはないのですか?」
個人的な好奇心と思われる脱線気味のゾエの質問に、ノードは「基本は」と微笑を返した。
魔塔を囲う林には魔獣が住んでいる、というのは小説にも描かれていたから普通に受け入れていたけれど、たしかに結界がなければ帝都は魔獣の危険に晒される。でも、何度か魔塔の林に足を踏み入れた身(幽体)としては、林を結界が覆っていると言われてもあまりピンと来ない。
「それより、問題はゾエさんを襲わせる目的で魔獣を違法に密輸した者がいるということです」
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