第一章 表裏村

7/35
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/222ページ
 歩みを進めれば、人通りは一気に減った。普段の授業は新校舎と呼ばれる建物で行われる。俺がいるのは旧校舎と呼ばれる方の建物で、築70年を軽く超えた木造建て2階の建物だ。  広い敷地に作られたことから階数は少なくても1階辺りの面積が広い。廊下の端に立てば反対の突当りが見えないくらい廊下は長く、教室数もかなりある。  しかし、老朽化に伴い新校舎を建設したことで使用されることはほとんどなくなった。今では物置や資料置き場として先生が使うか、俺たちのようにマイナーのサークル活動拠点として使われている。  階段を上がればギシギシと音が鳴って、廊下の隅には水たまりができていた。  俺は「図書室」という文字が掠れてしまった札がぶら下がった部屋の扉を見上げた。旧校舎2階の奥にある図書室には、たくさんの書籍が置いてある。  そのどれもが珍しい書籍ばかりで、一部の読書マニアや各専門の生徒からは重宝されていた。その図書室を使わせてもらっているのが俺達のサークルだった。 ――心霊スポット紹介動画投稿会  という活動そのままの名前のサークルに所属する人数は少ない。4年の先輩は引退して、今は3年の先輩が部長を引き継いでいる。  1年から3年合わせて10人程で、その内活動しているのは俺と部長くらい。あとは名前だけ借りている状態だ。
/222ページ

最初のコメントを投稿しよう!