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「いいねッ、ユキ」
「浮気なんか絶対に許さないって、翔之介さんに教えてやるんだよ。彼に夢中だってところを、ハッキリと見せ付けなさいッ」
「男は強がっているけど、本当は弱っちぃ生き物だんだからね!」
ミツコの言葉を信じて、レストランに行くまえから、用意周到な戦闘準備をした。
作戦は見事に成功。
翔之介は慌てて頚動脈の上に配置した親指を撤退。ユキの首にかけた手を、そのまま下に滑らせると背骨に沿ってユキの身体を優しくなでる。
腰を強く引き寄せると、誰よりも愛しいユキを抱きしめた。耳元で愛の言葉をささやきながら、シッカリと抱き締めたまま。
幸せそうな笑みを浮かべるとユキの匂いに包まれて、翔之介は熟睡した。
ユキはそっと片目を開けて、翔之介の敗北を確認。
やっと眠れると思った瞬間、翔之介の桁違いの情熱に疲労困憊していたユキは深い眠りに落ちていた。
嫉妬には、嫉妬返しの集中砲火だ。
現代のデズデモーナは強かった!オセローの嫉妬を、粉々に粉砕したのである。
しかしジョジョが、このまま大人しく黙って引き下がると思ったユキが甘かった。
翌日のティータイム。
執事が銀のトレーに乗せ、フレデリックからのメッセージを持ってきたのである。
「今朝ほど、花束と一緒に届きました」
執事がなぜ、そんなに遅くなってからメッセージカードを持ってきたかと言えば、事は簡単。
昨夜の一件を、運転手は執事に報告。
執事はさっそく、日本にいる大奥様のお耳にご注進したのである。
【もしもし伝言ゲーム】のようなキャッチがもたらす弊害か。昨夜の出来事を、翔之介の悪い癖がまた出た証と捕えた両親が、別荘に厳戒態勢を敷いたのだ。
「あのフランス製のあばずれを、一歩も敷地内に入れてはなりませんよ」
「よろしいですね!」、それは厳しい命令が下ったのである。
ユキが泣いたと言う事実は重い。
翔之介に近づく毒虫として、ジョジョはめでたく認定された。一緒にいたフレデリックも同罪だ。フレデリック・ザボンの調査内容が、翔之介の母の怒りに火を注ぐ。
「こんな評判のよくない男に、ユキを紹介するなんてッ」、それは血相を変えて怒りに燃えたようだ。
そんな訳で。
花束は焼却処分、メッセージカードには母親からの伝言が付いていたのである。
『ユキを泣かせたら許しませんよ』、翔之介が楽しそうに笑った。
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