13人が本棚に入れています
本棚に追加
/117ページ
神の領域
夕暮れ湾岸沿いを真っ赤なポルシェが疾走っていく。ヒカルの運転だ。後部座席にはボクとアンジェラが座っていた。
重たい雰囲気だ。
「これで良かったのかなァ……。マジで」
ボクは誰とはなしにつぶやいた。
「さァ、正義って言葉は危険な言葉ですからね」
アンジェラも外を眺めながら応えた。
「ああァ、不幸なことに世界じゅうで正義の名のもとに戦争や虐殺が繰り返されているからな」
ヒカルも眉をひそめ嘆いた。
「ええッ残念なことに……」アンジェラもうなずいた。
「だけど、オレたちは神じゃないから。答えなんて出やしないよ。永遠になァ」
ヒカルは運転しながらつぶやいた。
「はァそうかもしれませんね」
ボクもうなずくしかない。
しょせんここから先は『神の領域』だ。
ボクたちには答えなど出るはずがない。
夕陽が岬を紅く染めていった。
その中をヒカルのポルシェがボクとアンジェラを乗せて海岸線を疾走していく。
THE END
最初のコメントを投稿しよう!