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 机は考えていた。だんだん黒く汚れていく自分の体。周りの机たちにも同情され、机自身も愚痴をこぼしていた。  だが、最近体に変化があった。描かれる絵の数が減っているのだ。それどころか、全く描かれない日もある。  「嬉しいはずなのに、何か足りない気がする…。」  いつも愚痴を聞いてもらっていた机たちからは「良かったね!」と喜ばれたが、机はモヤモヤしていた。    3日程過ぎ、久しぶりに机の体に黒い線が走った。どんどん絵が描かれては、書き直されていく。そのとき、机は気づいたのだ。自分の真っ白な体に描かれる黒い線。純粋で穢れのなかった体が汚されていく快感に。  机は気づいてしまった。もうこの快感とは離れられない。そんなことを考えている間にあっという間に天板が黒くなった。そんな机を見ながら男が言った言葉に机は気づかなかった。 「やっぱり嬉しそうだ。」  
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