常世の森の魔女

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 プロローグ    僕の名前は風間よもぎ。神城市に住む小学五年生だ。  神城市はその昔、城下町として栄えた。あまりにも繁栄したので、その源である居城には、神さまが住んでいると人々は領主を称えた。居城に向かい、朝晩手を合わせた人もいたそうだ。しかし時は流れ、神さまが住んでいるはずの城は不審火による火災で焼け落ちた。今では城の痕跡はなく、ただ森が広がっているばかりだ。しかし、子ども達の間では、その森の奥には、昔の城下町に通じる穴があるのだと噂されていた。でも、実際城下町に行ったという人の話は聞いたことがない。それでも噂は語り継がれ、森はいつの頃からか永遠にある場所を意味する『常世の森』と呼ばれるようになった。 一、 はやり病  僕が通う神城小学校で、六年の生徒が次々に高熱を出し学年閉鎖に陥ったのは、まだ風薫る初夏の頃だった。 「ねえ、お兄ちゃん。感染る病気なのかな?」 「なにが?」 「ほら、六年生の間ではやってる病気だよ」
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