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ただ入学が決まってからは、あまりに御国言葉が強すぎるちゅうこっで、おいは標準語に戻すために励んことになっ。
おいとん別れを寂しがっちょっ、むぞうて仕方がなか弟に「標準語に慣るっために練習を手伝うて欲しか」て促して、弟は寂しがりながらも、「兄さあのためなら、おいも手伝う」てきばって手伝うてくれた。
すっと利発で賢か弟はあっちゅう間に標準語を覚えてくれた上に───俺が学校では困らないようにと、寄宿学校に入寮をするまで、標準語で屋敷では言葉を交わしてくれる、利発な上に可愛さと優しさまで身に付けている、やはり自慢の弟だと思う。
でも、その中身はまだこの世界に誕生して、片手の指の本数にも及ばない。
そして片方の指の本数に達する時、俺は寄宿学校に行かなければいけなかった。
ただ寄宿学校に合格したこと事態は屋敷中に限らず外からも、立派で優秀なことだ、何よりめでたいことだと盛んに言われていたので、利発で可愛い弟は、幼いながらに水を射すような事は口にはしなかった。
けれども、俺が相手をしていない時は随分と不機嫌な様子が多くなっているところが増えているのが如実に出始めてもいる。
「兄さあは、学校きばりたもんせ」
そんな事を俺の前では言ってくれているけれども、その実凄く寂しがっている。
しかも、俺が進学をすると同時に、故郷を離れることで、親同士でも仲の良い御近所と離れることになる。
弟が生まれるまでは、御近所とは家族ぐるみのお付き合いをしてはいて、そこの家には俺と弟の間になるくらいの年代の男の子がいた。
互いに長い間一人っ子の様な状況で、兄弟については自然に俺を兄、その子は弟という感じに振る舞っていたと思う。
けれども、俺に年の離れた本当の弟が誕生して、デレデレとする様になったのなら、互いに本当の兄弟について意識するようになった。
ただ、その子の場合は弟よりも「本当の兄」という存在に憧れているのです、と申し訳なさそうに告げられる。
弟については、俺の弟で十分に可愛いと思えるらしく、そして俺が弟を溺愛する様子に嫉妬を覚える処か、感銘を受けたそうだ。
これまで俺とその家の子は、世間では兄弟のように育っていると言われていたが、それは所謂御行儀の良い見本の様な兄弟となる。
しかし、どんなに兄弟の様にと言われてもそれは違うのだと、俺と弟を見て思ったという。
仲が良いのは羨ましいし、そう出来たのなら良いけれど、もし自分に兄という人がいるのならば、きっと存在しているだけでも心が許せると思うのです、と真面目な顔で告げられた。
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