僕とギター

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僕とギター

とある日を境に 小指が思うように動かなくなった 昨日まで見えてた道が無い 絶望とは本当に残酷なものだ ギターをケースに閉まって 音楽界を去った "ギターなんて二度と触るものか" 感受性が衰えなかったのは幸い ツールを耳から目に持ち替えた デザインの仕事は楽しい 時間と新しい仲間が癒してくれた 数年前「永遠のジャンゴ」を観て 恐る恐るホコリの被った ギターケースを開けてみる 随分と古臭い色になったものだ いつかの曲を弾いたら やっぱり小指のフレーズで ミスをして上手く弾けない でも もうプロな訳じゃない って思ったら気が楽になった 練習を重ねても あの時みたいには弾けないけど 趣味のギターって楽しい 時間というのは 不可逆的である代わりに 必ず夢と未来をくれる 今度トロイメライの譜面を 探しに行ってみよう いつか弾けたらいいなと思う
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