(プロローグ)

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(プロローグ)

 二〇〇五年八月五日  暑い夏の日の午後だった。セーラー服のカデナ・サンモントと海上自衛隊の目映いばかりの白い制服に身を包んだ三上マコトは、JR横須賀駅前の三番乗り場、観音崎行きバス停留所のベンチに坐っていた。  それは穏やかな潮風の吹く午後だった。八月の日射しがきらきらと横須賀港の海のさざ波に煌めき、光と水は幼子のように無邪気に戯れていた。潮風に髪を揺らしながら、カデナはいつものように口遊んでいた。 「……まもってあげたいあなたを……」  カデナとマコトは眩しい光と風の中で、ひたすらバスを待っていた。ふたりをふたりの未来へと連れてゆく八月のバスは、いつか必ず来ると信じて。若いふたりはいつまでもいつまでも、バスを待っていた。
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