熱気

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その日はとても暑い日だった。 気温は33℃で風もない。眩しいほどの青空には雲ひとつなく、太陽の日差しが痛いくらいに肌を突き刺す。そんな炎天下の中を汗だくになりながら歩いて帰ったオレは、その日一緒に帰ってうちで遊ぶ約束をしていたそいつを部屋に通して、麦茶を入れにキッチンに降りた。 誰もいない家の中はもう蒸し風呂状態だ。部屋にエアコンをつけてきたけど、そんなにすぐに冷えるわけじゃない。 氷、たくさん入れよう。 オレはたっぷり氷を入れてキンキンに冷えた麦茶を持って部屋に戻る。 「おまたせ。やっぱ直ぐには冷えないよな」 最初にくらべれば冷えたもののまだ涼しいまではいってない部屋で、止まらぬ汗を流しながらハンドファンを持つそいつの前に冷えた麦茶を置いた。 それはいつもの光景だった。 高校に入ってから仲良くなったそいつは、何も無い日はこうしてオレの家に一緒に帰っては、だらだらと夜まで過ごした。だからこの日もいつもと変わらないはずだった。 なのに・・・。 テーブルに二つの麦茶を置き、まだ冷えない部屋の中で汗だくのあいつの隣に腰を下ろす。 いつもの光景。 いつものこと。 なのにこの日はあいつの首元から、なぜか視線を外せないでいた。 暑さで第二ボタンまで開けられたシャツの、襟元から覗く形の良い鎖骨。そこは汗で光っていた。そして新たに汗が流れ落ちていって・・・。 それを何気なく目で追っていたその時、不意にそいつの手が伸びて来てオレのこめかみに流れた汗をその指で拭った。そしてその手がオレの後頭部に回り押さえられると同時に近づくそいつの顔を、オレはなぜかじっと見ていた。 鼻が触れた瞬間目を閉じてしまったのはなぜだろう。 唇に触れる柔らかい感触に少し口を開けて迎えてしまった舌は熱く、その感触にお腹の奥底がきゅっとなった。 「んぁ・・・」 無意識に出た甘やかな声に、自分でも驚く。それほどオレから出たとは思えないその声に、重なる唇がさらに深くなる。そして口の中を這う舌も大胆に動き始め、身体がぞくぞく震える。 「ん・・・ぅん・・・ん・・・」 一度出た声は止まらず、舌が動く度に鼻を抜けていく。するとあいつの手がズボンからシャツを引き出し、その中に潜り込んでくる。意識の全てが口にいっていたオレはその手の感触にビクンと身体が跳ね、思わずその手を掴んでしまう。けれどその手は止まらず上へとあがり、胸を包むように手のひらで揉む。 そこは女の子のように掴むほど豊かではない。なのに手のひらを円を描くように動かされ、敏感な突起を擦りあげられる。 「あっ・・・ん」 びくびくと身体が反応する。それとともに熱が下肢に集まり、じんじんとしてくる。正直気持ちがいい訳では無い。なのにそこの刺激はダイレクトに下肢に響き、身体を熱くする。 部屋はとうに適温になってるはずなのに、オレとあいつの身体は熱がこもり、くっついているところが熱い。 なんでこんなことになってるのか。 オレの震える身体をそいつが優しく床に倒すのを抵抗もせず受け入れながら、窓の外に目をやった。 外は相変わらず陽がさんさんと降り注ぎ、いつの間にか近くの電柱ではセミがうるさいくらいに鳴いていた。 暑いせいだ。 この訳の分からない状況も、それになんの抵抗もなく受け入れるオレも、全てこの暑さのせい。この異常な熱気がオレたちを狂わしている。 押し倒されて上半身を脱がされる。だからオレもそいつのベルトを外そうと手を伸ばす。するとそいつは一瞬手を止めオレを見るも、くすりと笑って再び手を動かした。 顕になったオレの素肌に、そいつは唇を押し当てペロリと舐める。そしてその舌は胸の突起にたどり着き、転がすように舐め回す。 変な感じ・・・。
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