2.夏の出来事(匡太)

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「伯母さん、空き瓶ないかな?」 「あぁ、ロケット花火に使うの?  懐かしい、和樹も良くやってたわ。三つも四つも並べて連続で飛ばしてた。  そこの三和土の上にない?」 「俺も和樹兄ちゃんに教えてもらったから、、  あったー、借りていきますね」 「いいよ。あっ匡くん、明日の朝、柚月が帰ってくるからね、、匡くんに会いたがってたよ」 「ほんとですか? 俺も会いたいです、柚月ちゃん綺麗になったかなぁ」 「うん、最近私に似て来たわよ」 「・・・・」 「匡くん!、無視しないでくれるかな」 「はははっ、伯母さんも綺麗ですよ」 「匡ちゃん遅いよ、もう半分ぐらいやっちゃった」 「構わないよ、お子ちゃま向け花火に興味はないから。翔真、ビンを斜めに立てたいんだ、何かないか?」 「うーん、この石はどうだ?」 「おおっ、いいんじゃないか」 枕石を置いて、空き瓶を斜め60度ぐらいに立て瓶の底の両側に、転がらないように当て石を置いた。 「翔真いいぞ」 「あいよ」 翔真がロケット花火を瓶の口に挿し、蚊取り線香で導火線に火を点けると、やがて勢いよく飛び出した。 ヒューーー、パン 乾いた音が、静かな山あいの村に響き渡る、 「やっぱり花火はロケットだな、、少年の夏って感じがするよな」 翔真は嬉しそうだけど、女性陣は冷ややかな顔をしていた。 「はーん、音だけで全然綺麗じゃないよ、  ねぇ愛美ちゃん」 「うん、明るくても暗くても関係ないじゃん」 ごもっともです、 おいおい翔真、何をする気だ 翔真はムッとして、ネズミ花火に火を点けると二人の近くに放り投げた、  ネズミ花火は、音を出しながら暴れる。 「わっ、わっ、なになに?」 浴衣の裾を持って逃げ惑う二人の近くで爆ぜた。 「翔真くん! ひどい!」 「あっはっはっは、馬鹿にするからだよ、なぁ匡太」 俺を巻き込むなよ、 「自分が楽しいと思う花火をやればいいさ」 「そう言う匡くんは、何がいいの?」 「俺は皆んなが楽しめるコレかな」 流星十五連発って書いてある少し太めの筒花火を瓶の口に挿して点火すると一つずつ色を変えながら火の玉が飛び出した。 「わぁ綺麗、さすが匡ちゃんセンスがいいね、  翔真くんとは違う」 嫌味を言われた翔真は、更に不貞腐れてしまった。
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