遊園地

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遊園地

・・・・・ 「うわっ!!すっご!」 俺は今、目の前に聳え立つアトラスションの数々に感嘆の声を漏らしていた。 2日目に俺達が足を運んだのは遊園地。 遊園地って中学の修学旅行以来かな。 でも今日は規模が大きいし、乗れるアトラクションも制限されていないから凄く楽しみだ。 「どこから行く!?俺、絶叫系制覇したいんだけど!!」 「慣らしにそれとか乗ってみる?」 「うん、乗る!」 まず1番近くにあった小さめのジェットコースターを指差すデイヴィスさんに頷きそこへ足を進めれば、意外と人は並んでおらずすぐに乗れそうだと安心する。 「なんかめっちゃ楽しい…」 「まだ何もしてないが」 不思議そうにそう聞いてきた兄に、絶対楽しいじゃんって気持ちが先走りしてやる前から気分上がる感じ、と説明するがよく理解出来ないのか首を傾げる。 例えば、試合とか発表とかで緊張して腹が痛くなる感覚に近いと思う、と言えばようやく納得したようで頷いていた。 「悠馬が楽しそうだと俺も楽しい」 「保護者じゃん」 「そんなもんだろ」 「あんま年変わんないけど」 それはつまり俺の精神年齢が低いと?と怪訝そうに兄を見上げれば、そういうところだぞ、と笑われる。 どういうとこですか!? 「あ、もう乗って良いみたい」 「やった」 「僕後ろ行くから2人で前に乗りなよ」 「はーい」 「ん」 デイヴィスさんに促されるまま前に座り、安全バーを下ろせば見計らったように動き出す車両。 久々のスリルに俺の心は高まるばかりだった。 ・・・・・ その後も回転ブランコやバイキング、フリーフォールなどを転々とし、そろそろ休憩しようかと俺たちは売店に足を向けていた。 「お、たこ焼きとかある」 「チュロスは定番だよね」 意外と種類がある事に驚きつつ、俺は1番に目に入ったたこ焼きを買おうとメニューを見るがノーマルと明太マヨの2種類あり迷ってしまう。 ノーマルにハズレは無いと思うけど、明太マヨとかめっちゃ食べてみたい。 でも普通にソースも食べたい。 うわー、悩む…。 「ソースと明太マヨを一つずつ」 「はいよ」 「えっ、何で?」 「分け合えば良いだろ。好きな物を食えばいい」 「兄貴はいいの?」 「俺もたこ焼きの気分だった」 ふと頭上から聞こえてきた声に驚いたのも束の間。 会計を済ませて2つのたこ焼きを手にした兄に俺は尊敬の眼差しを向ける。 なんてスマートなんだろうか。かっこいい!! 「あれ、2人ともたこ焼きにしたんだ」 「デイヴィスさんはチュロスにしなかったの?」 「お腹減ってるしね」 そう言って、手にホットドッグを持ったデイヴィスさんは俺達が座るベンチに来てニッコリと笑う。 そして腰を下ろして、彼はいただきますと言ってからホットドッグに齧り付いた。 それを見て俺も手を合わせる。 「んー!うまい」 「うわ、たこ焼きも美味しい。明太マヨいける」 「ソースも美味いな」 3人揃って感想を溢しながら咀嚼する中、半分ほど食べ進んだ頃に俺は一つを兄の前に差し出す。 「……?」 「食べないの?」 「!あぁ。食べる」 暫くそれを見つめて首を傾げる兄にそう言えば、納得したように頷いて明太マヨたこ焼きを口に入れた。 暫く味わうように噛んで、喉仏が上下した後に兄はまたひとつ頷いて口を開く。 「うまい」 「だよねー。俺も食べてい?」 「好きなだけ食っていい」 「ありがと」 「…へぇ」 その様子を傍観していたデイヴィスさんは少し驚いたような声を漏らして、またすぐにいつもの笑みへ戻す。 表情豊かだな、と思いつつ兄から貰ったソースたこ焼きを咀嚼していればふと横から顎を持ち上げられる感覚。 そして次の瞬間、口の端を伝う湿った感触に俺は目を見開いた。 「美味しいね」 あまりの衝撃に、その場の時が止まりデイヴィスさんと見つめ合う形で俺は頬を押さえる。 ……え、何してんの。この人。
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