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「陽菜が言ったんだろ? 俺の誕生日だから何でも言うことを聞くって」
「そう、だけど……」
実際は『何でも言うことを聞く』とは言っていない。
『俊ちゃんの好きなものをあげる』と言っただけだ。
まあでも、似たような意味になるのかな。
だから、結局何も言えずに俊ちゃんに引っ張られるがままについていった。
そしてたどり着いた場所は、キッチン。
「カレー作って」
「え!」
「だから、カレーライス」
「で、でも!」
あたしの中では、今日はステーキとかアボカドサラダとか……俊ちゃんの好きなもので、誕生日のお祝いとして見映えがいいものを作ろうと思っていたのに。
カレーライスって、全然誕生日っぽくない。
「俺はカレーがいいの。陽菜の作ったカレーが食いてえ」
そう言って微笑んだ俊ちゃんの表情にドキンッと胸が高鳴る。
でもそんな表情を見ていると、見映えよりも俊ちゃんの好きなものを作る方が誕生日に相応しいと気付いた。
「わかった! カレーライス作るね!」
そう言って、俊ちゃんに背中を向けて作り始めた。
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