Bird's Eye

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「ここはスタジア砂の国 死の原に栄えし翼の都…」 仕事が一区切りした三人は、陽が沈みかけるスタジアの街並を一望しながら麦酒(ビール)を煽っており、キンダーソンが頭に染み付いた詩の一節を不意に呟いた。 「あの詩、本当によく出来てますね。人の暮らしと宗教観だけでなく、神鳥の化石の存在と地下水脈の在処を正確に現している」 「今回の発見はスタジア国全ての学問に多大な影響を与えるだろう。よく見つけたな、カイル」 「へへ…。でも詩は何千年も前から唄い継がれて来てたものです。そういう意味ではあの詩人のお爺さんが立役者かも」 「ふむ、そうじゃろう…。そう言われると分前が欲しくなってきてしまったのお…」 すると、後ろからリュートを抱えた老人が声をかけてきて、三人は驚いて振り返った。 「げえっ、爺さん!」 「都に居着くことにしたんですね?」 「そうじゃよ。勢いに乗る今、先祖から受け継いだ…『神鳥賛歌』を唄い続けて後世に伝える…。それが今儂が成すべき事と思っての…」 「そう言って、一儲けの機会とも思ったんじゃないの?」 「それは言わない約束じゃよ、カッカッカ」 砂漠で会った時は厳格な印象を受けたのに、都で見た彼はただの陽気な老人に見えた。老人はその場に座り込むと、リュートを撫でながら続けた。 「じゃが…どちらも本音じゃ。少なくとも神鳥様の姿が見られたこと…スタジア人として誇りに思っとるよ。ありがとうな、あんた達。儂にはこれしかできんが…もう一度聴くかの?『神鳥賛歌』を」 拒む理由などない。3人の頷きをきっかけに、街角にリュートの音色と老人の歌声が響き渡ったのだった。
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