神社への道

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神社への道

この街の大イベントの1つでもあるから 予想通りの展開であると言われればそれまでで 俺と五十嵐の周りには いつのまにか 女バスと男バス部員が集まってるし なんならみんなで境内へ上る階段に順番で並んでいた。 「渡里先輩 今日何してましたか?」 普通に話しかけてくる女バスの相手をしながら 後列の段でマネージャーグループの3人がつるんで 笑っていた。 その様子からだと足は大丈夫そうだ。 話しかけてくる奴らに 適当に返事しながら少しずつ境内の中へ移動していく。 「早いとこ参拝しないとあと10分もないかもです!」 後輩の誰かの声がする。 普段着姿のやつもいれば ジャージのままのもいて女子から茶化されてた。 浴衣姿の女子もいたけど やっぱ 一番自分の合った雰囲気を選んでいるのは五十嵐だ。 やっとたどり着いた社の前で 少しだけ 女バスから距離を取って あとから来た五十嵐の横に移動した。 ちょっとだけ笑った五十嵐が 石畳の段差に躓いたから 咄嗟に肩を支えた。 境内は祭りならではの 淡い提灯に神聖な雰囲気と、拝殿の奥にある森の闇が交差して 喧噪の中にも静寂があった。 肩を支えたカノジョと目が合った時 遠くから花火の広がる音がした。 部員全員がワイワイしながら花火の見える場所へ移動していく。 セミのジーっという音と 花火が上がる歓声の中 「女バスに絡まれてニヤケてた。」 ぶーーっと膨れている浴衣姿のカノジョのことを 俺は 多分一生忘れないだろう。
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