真夜中三時の青椒肉絲

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 時間って有限なんだよ。  だから生き急いで何が悪いのって感じで、私たちは今日も生きてんだ。  左耳に耳閉感があって、あぁそう言えば昨日もクソ親父に殴られたんだっけ、と虚しくなった。  朝の満員電車に揺られる人たちは不器用だから、毎朝毎朝、ホーム上にある規定の線から少しだけはみ出すんだろう。たぶんきっと、彼らはどこかで死を希望しているはずだ。  朝焼けと共に帰宅することに慣れてしまった私の前に、気がつけば一人の男が立っていた。  さっきまで遊んでいたクラブでボディーガードをしてたやつだった。  黒いスーツを着たそいつが私に手を差し出してくる。  厳つい顔をしてるくせに、まるで騎士みたいな仕草だった。 「なぁお前、言葉遊びは好きか?」 「……さぁね? なんでそんなこと聞くの?」 「さっき、リズムに乗りながらなんかもごもご言ってただろ」  誰にも知られていないと思ってたことがバレた瞬間の恥ずかしさに軽く舌打ちをする。 「俺はお前みたいなやつを探してた。俺と一緒に世界を変えよう」  奴はそう告げたあと、俊敏な動きで私を担ぎあげた。  その行動は見事なまでに一切の隙がなく、私はされるがままだった。  これはもはや誘拐である。  例えこの世界に私を心配する「誰か」が居なくとも、あるいは夜遊び明けの瞼が重すぎて、いつの間にか奴の肩上でぐっすり眠りこけてしまったのだとしても。  これは立派な犯罪であった! と申し立てたい。
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