俺とお前はライバル同士

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新入社員で入った会社。 あの時出会ったあいつを、ずっとライバル視している。 「これからよろしく!」 内定式。 隣にいたおとなしそうな男性に話しかける。 緊張していたのが見るからにわかったそいつはきれいな黒髪に、細めのスーツが似合っていた。 あまり人と話すのが得意じゃないのだろうか。 きょどってたが、俺に話しかけられて嬉しそうに口角を上げた。 俺と背格好はあまり変わらない。 いや、ちょっとだけ相手の方が高いのだろうか。 俺は大学気分がまだ抜けていない感じの、つんつんした短髪で、少しつり目だ。 新社会人デビューが楽しみで買ったスーツは選びに選び抜いた一着だ! だけど、昔から人によってはちょっと怖いと思わせてしまう雰囲気みたいで、だから笑顔を忘れないようにしようと決めていた。 「名前はなんていうの?」 「えっ?あ、か、勝己、一誠です」 「へー勝己ね。なんか強そうだな!」 「そ、そんなことないですよ…」 少し伏し目がちにそう答える勝見。 まつ毛なが。とか思ったのを今でも覚えている。 俺が次郎、こいつが一誠。 入社してすぐは仲良く仕事をして、よくご飯食べに行って、励まし合っていた。 あいつはいつも弱気で、ポジティブ思考な俺が引っ張っていく感じで。 でも評価が進むにつれ、「名前通りの順位だね」なんてよく囁かれることになった。 あいつは「勝」に「1」だ。 たいして俺は仁と次の「W2」。 部署内の同期が俺たちだけだから余計だった。 しかも職種は営業。 数字でその差は突きつけられてしまった。 それがとにかくムカついて。 負けたくなくて。 こいつがクールというか、感情の起伏が少ないから、すかして見えて、それが気に食わなくて。 いつの間にか飲みに行くことも会社で話すことも少なくなっていった。 いや、俺が一方的に避けていた。負けたくなくて。 あれから3年。 ずっとそんな関係。
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