10000枚のラブレター ~家畜より愛をこめて~

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 ──数日後。  その日、ケイは【三輪タクシーで行く!事故物件巡り心霊ツアー2022 IN七王子】に参加し、帰宅したのは明け方だった。 「いやー……最っ高だったぜ。やっぱ三輪交通は突き抜けてるわ」  ガチ霊と存分に戯れた余韻に浸りながら彼がリビングに入ると。 「ん?」  リビングテーブルの上に、新聞広告らしき紙がうず高く積まれている。しかも一つや二つの束じゃない。 「古紙回収の出し忘れか?」  見ればソファの上でチャーコがプギー……と寝息を立てている。 「コイツ、また寝藁で寝てない……」  ふと彼の目に紙束の一番上が目に入った。  けいえ。らぶれた いちまんまい  ミミズがのたくったような珍妙なひらがなは、紛れもなくチャーコの筆跡。 「ラブレター……俺に? って、一万枚!?」  紙束を確かめると紙面いっぱいに大きな文字がひとつずつ。それを順にめくっていくと。  が ん ば ゆ け い が す ち 「……おいコラ。頑張る、だろが」  だが拙い文字はまだ続いている。  が ん ば や な い け い も す ち 「…………」  ぜ ん ぶ す ち ♥️ ♥️ ♥️ 「……すき、だろ」  それは100%丸ごとのチャーコ。出会った時から今も、そしてこれからも変わらない──ずっと。 「はは……、ハートが途中からヒヅメの型押しになってるじゃねぇか。めんどくなったな?」  それでも10000枚近く、スタンプ台と便箋(裏が白の新聞広告)を交互にぺったんぺったん。その作業は大変だっただろう。 「ん?」  なぜか10枚を数えた辺りからヒヅメの形が変わっている。
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