第一話

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ー例えば、僕が誰かに愛されたなら 死にたいと思わなかったかも知れない。 それは とても幸せな人生だと思うからー 誰かに愛される、誰かを愛することは、きっと僕の人生を豊かなものにしただろう。 そして 幸せな人生には安らかな死が(おとず)れると信じている。 それが僕の夢。 要するに何が言いたいかっていうと… フツーに平凡な人生で良かったんだけどー 「香坂ナギ!」 そう、香坂ナギは僕の名前。 そして その名を呼ぶ声の(ぬし)の姿は僕にしか()えず、他の人間には()えない。 多分、()えたとしても高度なコスプレヤローぐらいにしか思わないだろうな? 「お(ぬし)は また無視か!」 と、怒りを(あら)わにした声色(こわいろ)が背後から聴こえてくる。 正直な話し、自分以外に姿が()えないのだから 無視するしかないのだ。 頭がおかしいと周りには思われたくない。 仮にスマホで さも通話中を(よそお)うことも可能ではあるが、勇気ゼロな感じで無理。
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