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お見送りをしてくれるのは、国王と宰相と騎士団長。だけではなく、女官長や給仕長、家庭教師を務めてくださった先生方、下男のお爺さんもいた。そして、我が従姉の姉姫様。
「ちょっと、誰よその人!」
寝起きの不機嫌さを隠そうともせず女官長に引っ張って来られた彼女は、私の腰に手を回しぴたりと寄り添う彼を見て、目を見開いてキーキーと叫んだ。
「あんたには婚約者がいるでしょ?」
「はい」
「あの蛙はどこに行ったのよ! なに勝手なことしているわけ? 言いつけてやるわ」
「ですから、この方が私の婚約者、魔物の国の第三王子ラーナ様です」
「はぁ?!」
素っ頓狂な声を上げ、姉姫様はそれから慌てて口をつぐんだ。取り繕った笑顔を浮かべると、今更ながらラーナ様に向って淑女のお辞儀をする。
「お見苦しいところを見せてしまい、申し訳ございません。ラーナ王子様のご立派な姿を見て、感動のあまり我を忘れてしまいましたの。お許し下さいませ」
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