ケンタウルス

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ケンタウルス

私はネックレスを取り出すと、チェーンを外し、ブレスレットを元の大きさに戻した。外せば元の大きさに戻る仕様になっている。 ブレスレットを腕にはめると、私は目の前にいるケンタウルスに手を翳し、意識を集中させた。ジェイドを今にも踏み潰しそうなケンタウルスに向けて、魔術を連続で放つ。 「ファイアウォール!ファイアウォール!ファイアウォール!」 私の放った炎が、足に命中したのか片足を上げたケンタウルスはバランスを崩し、そのまま横に倒れた。 「ま、間に合った・・・」 身体の力が抜けて、そのまま地面にへたり込むと、森の中から先ほどの難民たちが出てくる。 「今だ!」 「いけー!」 森の中から様子を伺っていたのか、難民たちはケンタウルスが倒れると一気に飛び掛かった。槍のようなもので突き刺し、ケンタウルスを倒す光景は想像以上に凄惨だった・・・ジェイドは倒れたまま、意識を失っている様だ。 不意に辺りがざわめき、木々が揺れるのが見えた。人がやって来る気配がして、『もう追手が来たのか』と、私は力を振り絞って再び立ち上がった。 「アイリス??」 けれど、森の中から現れたのは・・・白馬に乗ったエリオット様だった。 「エリオット様・・・幻ですか?」 「アイリス・・・無事でよかった」 エリオット様は馬から降りて、私を抱きしめた。自分は助かったのだと・・・やっと実感する事が出来たのだった。 「エリオット様・・・」 「・・・オホン」 私達が熱い抱擁をしていると、隣で咳ばらいをする声が聞こえた。 「あ・・・オーベル様がいました。サラも」 「殿下、そのへんで」 「あ、ああ」 「アイリス様、心配しました」 「サラ、心配かけてごめんなさい」 サラの近くまで行くと、安心したのか私は泣き出してしまった・・・そんな私を、サラは優しく抱きしめてくれる。 「それにしても、一体何があったのです?」 3人の視線はケンタウルスに群がる難民に向けられ・・・そのまま近くに倒れているジェイドへと向いた。 「こいつは確か・・・」 「こいつは・・・司教の息子だ」 「ジェイドが主犯とは・・・逃げたのを見逃すべきでは、ありませんでしたね」 みんなの勘違いに驚いて、わたしの涙は一気に引っ込んでしまった。その中でもエリオット様は剣を抜いて、今にも振り下ろしそうな勢いである。 「エリオット様、お待ちください」 「・・・アイリス、庇うのか?」 「いえ、そうではなくて・・・私を攫ったのは別の人物なのです」 「「「・・・・・・・え?」」」
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