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プロローグ
衣川館の外から兵たちの声が聞こえる。
九朗を討て、義経を討て、首級を挙げろ、矢を放て……私を殺そうと勢いづく者どもがひしめき合っているのだろう。戸の前には恐らくは武蔵坊がいるのだろうが、一騎当千の武蔵坊弁慶も不死身ではない。
郷と娘はもうすでに息を引き取った。というより、私自ら手にかけた。
「気の毒なことを、しましたね」
二人の亡骸に手を合わせる。私ではなく、もっと普通の、平凡な家に嫁いでおれば、平凡な家に生まれてくれば、きっと幸多き生涯であったろうに……
脇差を抜き、首に刃を当てる。
私は何を間違ってしまったのだろうか? 平家を滅ぼせとの兄の命に従い、尽くし、一人残らず平家を滅してきたのだが……兄上は何に怒られたのだろうか?
それを理解できればあるいは、兄上とも分かり合えていたのだろうか……
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