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「優斗、ここは?」
みゆが辺りを見回しながら言った。
「さっき城の崖から落ちただろ?」
そう言って、俺も周囲を見た。
ありえない。ここは佐和城だったはずだ。それなのに、広がった草原の先には、西洋風の家が何軒目も見える。
「ここはどこだ?」
俺は訳がわからなくなった。
「私、さっき、なんだか何かに引っ張られるようにして落ちたの。すごい力だった」
「何かにって何だ?」
「わからない。誰かに呼ばれた気がした」
誰かって、崖から落ちて亡くなった霊とか?
霊が生きている人間を引っ張るという話を聞いた事がある。
「とりあえず、2人とも助かって良かった」
俺は震える手で、みゆの手を握った。
「落ちる瞬間、優斗の声が聞こえたよ。優斗は、私を助けようとして一緒に落ちたの?」
みゆが泣きそうな顔で、俺を見ている。
「助けるのは当たり前だろ」
俺はみゆの頭をガシガシとなでた。
「優斗、ありがとう」
「うん。とりあえず、みゆの足の治療をしてもらいたいな。どこかに病院があるといいんだけど。俺、探してくるよ」
足の骨が折れているかもしれないみゆを、歩かせる訳にはいかない。
「お願いね」
みゆに頼まれ、俺は立ち上がった。
みゆほどではないけど、俺も身体中が痛くて、ゆっくりしか歩けない。
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