よる、といき、て

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 よる。  ぼくは、きみと歩いていた。  でも、ぼくが気付かないうちに、きみはどこかに行ってしまったみたいだった。  ぼくは、きみを追いかけようとしたんだけど、やめた。  きみはきっと正しいから。  でも、ちょっとだけつらいな。  なんだか、見すてられちゃったみたいな気がして。  でも、きみはそんなことしない。  きみはきっと正しいから。  そんなことを思ってたら、よるになった。  きみがいないよるはきらいだ。  こわいし、さむい。  今までは、きみがあったかくしてくれてたんだな。  もうきみはいなくなっちゃったけど。  だから、ぼくはよるに語りかける。  どうか、ぼくをつらぬいてくれませんか。  よるは答えない。  ここでいきていけって、そう言いたいのかな。  きみのいないここで?  でも、しかたない。  もどってはこないんだろうな。  ぼくのためにどこかに行ったんだ。  きみはきっと正しいから。   ぼくね、あたまがおかしくなっちゃうくらい、きみのことがすきなんだ。  どうしたらいいのかな?  ぼくの吐く息は白い。  街の空気も白くなっていく。  いやなかんじ。  でも、どうにかして、いきていかなくちゃ。  ぼくがここでいきていったら、きみはほめてくれるのかな?  ほめてくれなくてもいいんだ。  きみはきっと正しいから。  ぼくは、街をふらふらと歩く。  いつも行くおみせも、いつも行かないおみせも、シャッターがしまっていて、入れなかった。  きっとみんな、眠っているんだ。  ぼくも眠いな。  歩きつかれて、すわりこむ。  きみはきっと正しい。  でも、ひとりはやっぱりやだな。  ぼくはよるにといかける。  よるさん、よるさん。  ぼく、あなたがこわいです。  ぼくをつつみこんで、ぼくといっしょに消えてくれませんか?  よるは、ちょっとまよったあと、ゆっくりとうなずいて、ぼくのからだをもち上げた。  ふわふわと浮いて、なんだかへんなきもちだ。  よるは、ゆっくりちぢんで、ぼくの中に入ってくる。  つつみこむのは、ぼくのほうだった。  ぼくのなかに、とぷとぷとよるが満ちて、ぼくは
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