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「黒龍、その前に降ろしてちょうだい! 本当にもう……こんな格好でお母様たちの前に出られないわよー」
「奥方殿、そのような心配はご無用ですぞ。あの親父殿のことです、対抗意識丸出しで母上様を抱き上げるくらいはなされますよ、きっと!」
曹がわざとかしこまって執事の如く胸に手を当てながらそんなことを言う。風の方も友の援護射撃に機嫌は上々だ。
「さすがは我が友だ。よく分かっている」
「まあ! あなたたちったら……」
調子のいいことを言っちゃってと美紅はますます頬を染め、
「でもダメダメ! 本当にもう降ろしてちょうだいな!」
「却下だ。絶対に降ろさんぞー」
「もう……! 貴方ったら……」
「では奥方様、賭けましょう! 親父殿が対抗意識を出して母上を抱き上げるかどうか」
「俺は抱き上げる方に賭けるぞ! きっとこーんなふうに目を三角に吊り上げながら、『私なら片手でできる』とか言い出しそうだ」
「違いない! 俺も抱き上げる方に一票だ!」
「嫌よ、もう! あなたたちったらー」
三人で子供のようにはしゃぎ合う。
賑やかな香港の夜が幸せと共にゆっくり更けていくのだった。
【番外編】素晴らしき贈り物 - FIN -
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