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「お腹、大丈夫?」 凛さんが私のお腹を撫でながら心配そうな顔をしている。 それに笑いかけ、隣に座る凛さんに少しもたれかかった。 「私に何かあってもこんなにも多くの人達がいるから大丈夫だよ、凛さん。」 「・・・凄い人数になったね?」 「だから、誰か1人に何かがあっても必ず誰かが助けてくれる。」 凛さんを見ながらそう言うと凛さんは優しい笑顔で頷いた。 その時・・・ 花火の打ち上がる音が聞こえ・・・ 夜空に大きな綺麗な花火が・・・。 それから一拍置き、身体の底まで震えるような大きな大きな音がして・・・ 私の手を、凛さんが握った・・・。 その手を私も握り返す・・・。 それから次々と夜空に花火が上がり、大きな大きな花火の音も重なる・・・。 そして、凛さんが花火を見上げながら言った。 「やっぱり、心臓の音みたいだな。」 「まだ嫌い?」 「俺1人の心臓の音だけではなくて、みんなの心臓の音みたいに聞こえる。」 「それは私も思ってた。」 「みんなの花火の音が重なっているね。 大きくて、震えるくらい・・・。」 「この先、いつか誰か1人の花火の音が終わる時が来るけど・・・きっと大丈夫。 なんとなくしっかりするくらいで大丈夫だよ、凛さん。」 私がそう言うと、凛さんは私の手から手を離し私の肩を優しく抱き寄せた。 「それでも、他の人の花火の音は続いてくからね。 悠ちゃんがそう教えてくれた。」 「元々は“先生”が教えてくれたんだけどね?」 「その元々も悠ちゃんが気付かせてくれたからな。」 2人で笑いながら夜空に輝く花火を見上げる。 私達の周りに集まるように座った人達の花火の音は、きっと本物の花火の音のように重なっているはず。 「だからきっと大丈夫。 花火の音は終わることがないよ。 ずっと続いていく・・・。」 そう言いながら私がお腹に手をのせると、凛さんが私の手に優しく手を重ねてくれた。 「うん、花火の音は終わらないね・・・。」 そう言って優しく笑う凛さんの胸に耳を当てる。 健康診断が今年もオールAだった凛さん38歳の花火の音は、しっかりと鳴っている・・・。 「でも、俺の花火の音が終わるまでは抱き締めてくれるんだよね・・・!?」 これには笑う。 花火の音にも負けないくらい大笑いしてしまった。 end.......
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