辛杉家の憂鬱 ジョロキュア編2 逃避行

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 あの日自分は運命に出会った、と思っている。二十年はまえになるだろうか。  俺は電話ボックスに貼られた求人に目を奪われていた。 『仕事内容、治験。三食激辛メシと昼寝付き、住み込みOK』  こ・れ・だ!  エベレストのてっぺんからサバンナの奥地まで、行きたいところに行き、やりたいことをやった。  俺は冒険家、ジョロキュアだ。  しかし、どこへ行くにも先立つものは必要で、このときの俺はその日の食費にも事欠いていた。無計画にドバイでスカイダイビングなんかするんじゃなかった。  そんなときに見つけた求人は日給制で、健康なら誰でも応募可能とあった。  求人によれば、辛味に関する研究をしているどこぞのグループが、刺激物が苦手な人用に辛味を抑える薬やらなにやらの研究をしていて、その研究に被験者として参加すれば日当五万円、らしい。高い。
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