○○が落ちてきた

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神父様は日頃のおっとりとした雰囲気から窺え知れない程迅速に、真っ先に助けを弟君に急かされて呼びに言った後輩を使って、奥様にしらせるという形にはなったけれども、屋敷の使用人を使うこともなく、時間にして穴に落ちてから数分で救出されてしまった。 本来は嫡男である、"兄様"が穴に落ちるなんて!ということなんだろうが、この屋敷で働く人々が一団で家族の様なことから「武道の心得のありとっさの事で受け身とれる嫡男が、穴に落ちることで使用人の怪我させることなくすんだ」という、まるで英雄譚のような扱いになるのは、既に季節が一つ過ぎる時間を過ごした俺にも、後輩にも、勿論神父様にもわかっていた。 ただ、やはり落ちた直後は皆が奉りあげるように心配して、"ボンボン"という形容詞が使える3人の少年を怪我がしてなくても、医者に見せるべく回収される(坊ちゃんは激しく抵抗したが無理だった)。 そして残るのは、「この子達と後始末を渡しておきましょう」と爽やかに申し出た、俺と後輩と神父様になる。 それから俺と後輩にいともあっさりと、冒険を進めた理由を告げて、安全確認をした後に、腰に命綱をつけて、ヒラリと穴に飛び込んで、後輩を待機させて俺も続いた。 着地すると同時に、移植ゴテをカソックの袂から取りだし、教会の花壇の世話をするように底を堀始める。 すると、俺が手伝うまでもなく、神父様は小さな箱を取り出して、嬉しそうに口ひげを揺らした。 「昔埋めていた宝物の場所がある程度あたりはつけていたんだけれども、わからなくてねいやあ、助かった」 「そんなことだろうと思いましたよ」 俺がそんな感想を口にして、後輩に先に神父様に引っ張りあげてもらってから、俺は神父様に手を伸ばされて引っ張り上げられながらこんなことを告げらる。 「落ちたこと事態は運が悪いともいえるだろう。けれども穴の先に落ちた先でしたのなら、それは時間は短いかもしれないけれども十分冒険だと言えると思わないかね?」 多くの人を魅了して虜にするウインクをしながら、最初から最後()まで、俺も後輩も坊ちゃんも、貴方の大きく緩やかな器に落ちてから抜け出せないんだ、と思ったけれども、口には出さないでおいた。
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