○○が落ちてきた

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この時の俺の感想と言えば、神父様はまた何を目論んでいるのだろうというものになる。 この方は本当に良い人物だろうとは思うし尊敬もしているのだけれども、何だか計り知れないものを抱えているのも確かだった。 そして多分俺は、その計り知れない知れない何かについては、その手伝いをしているということになっているのを承知している。 それは多分、後輩も一緒で、出自だけでいえば俺よりも十分に複雑で、更には利用価値もあると思う。 それを証明するように、神父様が引き取った当初は、後輩の"父親"を知った輩が教会に赴いて何かしら口にしては引き取ろうとしていた。 けれども、後輩はそれらを自分の意思で断った後、弟殿が屋敷で世話になるなら絶対に来なかったとは口にしているが、神父様が命じたこのお屋敷での就職を受け入れた。 それはある意味俺も同じような物なんだが、でも決して神父様の操り人形になっているつもりはなく、あくまも自分の意思にがあってこその行動だとも思っている。 けれども、その行動の真意を図りかねてもいるから、まるで神父様という懐の大きくて安全な器の中にいる上で見上げているような気分になるのだ。 それは教会で世話になっている子供達も俺も含めて後輩、それにきっと、この屋敷の坊っちゃんも多分似たり寄ったりのところはあるように思えた。 ただ、最近は決して神父様を疑うとか、後ろ向きな気持ちではなく純粋な気持ちで、「どうして?」という思いで見上げると、まるで縁取られている空を見上げて、自分が望んで入った懐の器だけれども、状況と見方によっては落ちているようにも見えるのだな、と考えもする。 そして、きっとそんなことを考えながら、子供達だけの森の散策に加わってしまったから、兄君が突然目の前で姿を消してしまったのに、準備も何もせずに追いかけて、同じ穴に落ちてしまうなんてをしてしまうんだと、俺はため息を吐き出した。 ※ 「心配せんでも、弟もいるから直ぐに助けに来てくれる、ほら」 「兄さあ!近づきすぎど!」 俺の自嘲のため息の解釈を、今後の心配とした兄君が安心させるように口にして、俺の短い髪の頭を撫でた。 そして、それと同時に坊っちゃんの叫び声が聞こえて、後輩と弟君が迅速に神父殿に連絡をして、時間にして極僅かで、庭の冒険は終わった。
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